映画「劇場」

劇場





「いつまでもつだろうか
次に不安が押し寄せてくるのはいつだろうか
朝まではもちそうだ。」

冒頭のこの語りかけるようなセリフは映画中、何度かリフレインされる。
この言葉の引力がすごい。

おそらく生きているほとんどの人がベースに持っているだろう不安。不安と隣り合わせで生きてる人にとって、心をぎゅっとえぐられる言葉だ。

この映画の見所の1つは主演山崎山崎賢人の怪演だ。今までは王子様のような好青年の役の印象が彼にはあった。しかし、この映画の主人公永田のキャラクターはとても男臭い、汚い、おろか、惨め、そんな言葉が似合うような役ところだ。たが見事にはまっている。そして、それがなぜだか心地よくさえ感じられた。人間らしさが溢れる愚かなキャラクターに安心をしたのかもしれない。

後半、ラストに向かって展開していくシーンで、自転車で2人乗りをして夜道を走るシーンがある。
自転車の後ろに沙希をのせ、漕ぎはじめる瞬間、2人の足元がアップで映し出される。
初めて出会った時に履いていたお揃いのスニーカー。
あ、2人ともまだこのスニーカーを履いていたんだ。そう感じた時に、現実的には離れた方がよい2人なのに、気持ちの部分では離れきれない2人の心の奥の奥のほうにある思いがそこに反映されてるような気がした。

永田はどう考えてもダメな人間なのに、なんだか2人にうまくいってほしいと思ってしまうのは、2人が心の中では、まだお互いを想っていることが伝わってくるからだ。
そしていつかの自分をみているような、うまくいかなかった自分たちの恋愛を2人に投影しながら、ハッピーエンドに導きたいという願望があるからなのかもしれない。


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